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従業員満足度を企業の発展につなげる
1949年の設立以来、大分県を中心に、地元企業の成長と地域経済の活性化に貢献してきた「豊和銀行」。新型コロナウイルス感染症5類移行後も、エネルギーや原材料価格の高騰、少子高齢化による人手不足など厳しい経営環境に直面する中小企業・小規模事業者を、経営課題の解決と円滑な資金供給の両面で支え続けています。また、職場環境の整備にも積極的に取り組んでおり、2017年には「くるみん認定」を取得。2018年には「おおいた女性活躍推進事業者表彰」を受賞するなど、女性行員がその能力や個性を最大限に発揮できる職場環境を整え、企業全体の持続的な成長につなげています。
伊東理絵さんは、2007年に新卒で豊和銀行に入行しました。産前産後休業や育児休業を挟みながら、本店営業部や牧支店、寒田支店での窓口業務や営業統括部での業務を経験し、現在はソリューション支援部の副調査役として活躍しています。
ソリューション支援部は、預金や融資、為替といった銀行の基本業務以外でお客様の課題解決をサポートする部署。伊東さんは主にビジネスマッチングを担当し、例えば食品関連の取引先が販路拡大を希望する際にはバイヤーを紹介したり、商談会をセッティングしたりするなどの支援を行っています。また補助金申請のサポートも手がけており、新しい設備導入を検討する取引先に補助金情報を提供し、その活用方法について具体的なアドバイスも行っています。「直接取引先を担当するのではなく、支店だけでは解決が難しい課題を支援する役割です。特にソリューション関連は支店での対応が難しいため、多くのお客様を担当しています」。
取引先の課題解決に効果的な提案を行うためには、日々の学びが欠かせません。忙しい毎日の中でモチベーションを維持する原動力となっているのが、10歳と4歳の子どもたちの存在です。伊東さんは子どもたちとの時間を大切にするため、「子が3歳に達する日まで」の法定義務や、「子が小学校1年修了まで」の努力目標を大きく超え、「子が小学校6年修了まで」利用可能な育児短時間勤務制度を活用し、仕事と育児を両立しています。「一人だけ退勤時間が早いため、周囲の目が気になることもありますが、上司が『時間になったらしっかり帰りなさい』と声をかけてくれるなど、制度を安心して利用できる職場環境が整っています。さらに、子どもの体調不良や平日の行事にも柔軟に対応してもらえます」と、周囲への感謝を語ります。また、ITの拡充により、行員へノート型パソコンが割り当てられ、子どもが風邪をひいて学校を休む際などには在宅勤務する環境が整ったことも、育児との両立の助けになっているそうです。
大分県が推進するDX戦略「経営指標見える化プログラムONE OITA」の伴走支援パートナーとして、県内事業者の課題把握やビジョン策定から施策実施、改善までを総合的に支援する役割も担っている伊東さん。取引先のDX支援に役立つ知識を深めるため、「ITパスポート」の国家資格取得に向けた勉強に励みながらも、育児を楽しむことも忘れず充実した毎日を送っています。
人事部副部長の田中豊明さんは、主に労務管理を担当し、人事施策の企画立案や、女性が働きやすい環境の整備を手掛けています。前述の伊東さんのことは、「お客様を直接ご支援する重要な業務を担っているソリューション支援部の中でも、窓口業務を約10年経験しているため現場感覚に優れ、課題を発見する力が抜群。その豊富な経験を生かして、幅広い業務に貢献しています」と高く評価しています。
田中さんが人事部に配属されたのは2020年ですが、女性活躍への取り組みは、それ以前から進められてきました。豊和銀行では行員の約半分が女性であり、最近の採用においても女性の割合が男性を上回る傾向にあります。そのため、女性が働きやすい環境を整備することは会社運営の重要なテーマとなっていたそうです。「地域限定職という制度を用いると、一定の条件を満たすことで地域を限定して働くことが可能になります。これにより、転勤などの就業継続を妨げる障壁を取り除けます」と田中さん。2020年以降は、育児短時間勤務の対象年齢を「子が小学校6年生修了まで」に拡大。地域限定職の役職上限の撤廃に加え、昇進スピードを総合職と同等にし、制度を活用しやすくする改定を行うなど、働きやすい環境づくりがさらに進んでいます。
これらの制度は行員の要望に応える形で導入されています。同行では「心理的安全性」の確保に注力しており、自由に意見を発信できる職場環境の構築を目指しているそうです。その必要性についての情報発信や啓発活動、上司や行員との面談を通じて、要望を上げやすい環境づくりを続けています。「要望を検討することは簡単ですが、実現には経済的な制約や運営面での影響を考慮するとともに、周囲の合意や納得を得ることも必要で、簡単なことではありません。しかし、従業員満足度を向上させることは、働きやすい環境づくりの鍵となります。行員の満足度が上がり、寛容で柔軟な組織の構築が推進されるため、これからも取り組みを強化していきます」。
田中さんは、今後の課題について、男女間の賃金格差の是正を挙げています。同行では男女間で制度上の差はありませんが、女性は退職するケースが多く、平均勤続年数の差により賃金格差が生まれています。「勤続年数を伸ばす取り組みと、キャリアアップのための支援が必要です」と田中さんは述べます。その一環として、入行1年目から3年目までに様々な業務を経験する「マルチキャリア開発プログラム」を導入。女性が携わる機会が少なかった渉外・融資業務も経験する機会を設け、キャリアの選択肢を広げる後押しをしています。田中さんは「10年後、20年後には支店長職の半数が女性になると期待しています」と展望を語り、これからも行員の成長と働きやすい環境づくりを推進していく方向性を示してくれました。
企業名 | 株式会社豊和銀行 |
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事業内容 | 預金業務、貸出業務、為替業務、証券業務、投資信託・保険商品の窓口販売業務など |
設 立 | 1949年 |
所在地 | 〒870-8686 大分市王子中町4-10 |
TEL | 097-534-2611 |
URL | https://www.howabank.co.jp |
※ 2025年1月現在