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ワークライフバランスの実現
日豊ケアサービスは豊後高田市を拠点に、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、通所介護事業所の運営やヘルパー派遣、ケアプラン作成などを行っています。職員一人ひとりが働きがいと誇りを感じ、安心して長く働ける職場づくりを目指し、2009年から働き方改革に着手。その結果、2016年には大分労働局から子育てサポート企業として「くるみん」および県内初となる「プラチナくるみん」認定を、翌年には女性の活躍促進への取り組みが評価され、「えるぼし(認定段階2)」を取得しています。介護需要の増加が予想される中で取り組んだ、出産や育児、介護を抱える職員への支援は、離職率の低下や働きがいの向上といった大きな成果を上げ、他の事業者のお手本となっています。
2011年に新卒採用され、今年で入社14年目を数える越智田彩香さん。日豊ケアサービスが運営する介護付き有料老人ホーム「ケアプレイス オリーブ」の介護職員として、食事や入浴、排泄の介助に加え、生活援助、機能訓練、レクリエーションなどに従事し、入居者の身の回りの世話をしています。また、3フロアある施設の2階フロア主任として、他の介護職員をフォローしながら他部署との連携を図り、入居者の生活をサポートしています。
地元豊後高田市出身の越智田さんは、高田高校を卒業後、福岡県の短期大学へ進学。卒業後、日豊ケアサービスに採用され、地元に戻りました。「豊後高田市で、当時希望していた職種とは違う介護職を選びました。選んだ理由は、自分がおばあちゃん子だったこともあり、高齢者とかかわる仕事に興味があったからです」。
介護職員として必要な基礎知識と技術を習得するため、入社前にホームヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)を受講し、認定資格を取得しました。人間相手の仕事ということもあり、大変なことも多かったそうです。「入居者には様々な状態の方がいらっしゃいます。対応が難しいこともありますが、入居者やそのご家族から『ありがとう』と言われるたびに、この仕事を選んで良かったと感じます」とやりがいを語ります。
「ケアプレイス オリーブ」では、基本的に2交代制のシフト勤務が導入されており、雇用形態や職員の希望に応じて早出、日勤、遅出、夜勤など柔軟に働ける環境が整っています。現在、妊娠8カ月の越智田さんは1月中旬から産休に入る予定で、夜勤の免除を受け、日勤中心のシフトで働いています。「妊娠を報告して以降、周りの職員が優しく接してくれて、『無理しないで』と気遣ってくれました。みんなのサポートのおかげで、辛い時期を乗り越えることもできました。些細なことでも笑い合える居心地の良い職場です」と職場環境の良さを教えてくれました。
育児と仕事を両立している先輩たちを参考に、産前・産後休業や育児休業取得後の復職を計画している越智田さん。「時間単位有給休暇」や「短時間正社員制度」など、育児と仕事の両立を支援する制度の活用も視野に入れながら、新たな挑戦となる「子育て」に胸を膨らませています。
「すべての働き方改革の推進は、職員の定着率向上と人材確保を目指したものです」と話す、事業運営管理主任の松前孝二さん。経理や人事、総務といった介護以外の業務を一手に引き受ける、日豊ケアサービスの縁の下の力持ちです。「DXなどの技術革新による省力化だけでは、介護業界全体の慢性的な人手不足に対応できないと感じたため、『辞めない会社』を目指すことが急務だった」と当時の事情を語ります。
「高齢者が嫌いという理由で辞める職員はいません」と松前さん。介護業界で離職率が高い要因を、職場の雰囲気や組織体制、あるいは人間関係に起因していると分析。まずは、上司が部下をしっかりとフォローできる体制をつくることから始めました。その一環として導入したのが「キャリアパス制度」です。全職員が年に一度、取締役との面談を実施し、組織の課題点を洗い出し、改善策に反映していくという仕組みを構築しました。すべての職員が「自分の意見を主張する機会」を設けることで、上司とコミュニケーションが取れると考えたからです。結果、職場環境が改善されたと振り返ります。
また、結婚や出産、育児、親の介護を理由に退職することが一般的だったことも、女性スタッフが多い介護現場に人材が定着しない理由となっていました。この状況を変えるため、時間単位の有給休暇や短時間正社員制度の導入、有給休暇取得の推進、所定外労働時間の削減など、柔軟な働き方を可能にする仕組みづくりに注力すると同時に、結婚や出産を経験しても働き続ける制度の理解と職員の周知に力を入れました。退職を考えていた女性職員に対し、会社に残ってもらうよう説得するなど、地道な努力を重ねてきたそうです。
こうした働き方改革を推進する中で、マスコミからの注目も大きな助けとなりました。「『くるみん認定』を取得した際に新聞やテレビ、ラジオから取材を受け、それが次のステップへのモチベーションになりました。このような良い循環が、企業の成長に繋がっています」と松前さん。こうした様々な改革の結果、「働き続ける風土」が定着するまでには約10年を要したそうです。
さらなる職場改善について松前さんは、「介護の仕事に携わる人たちが楽しんで働いている現状を、世の中に伝えることが重要」と考えています。最後に「介護は決して簡単な仕事ではありませんが、やりがいを見つけ、楽しみながら働ける環境は整っています。弊社では介護職の魅力を発信し、より多様な人材を迎え入れるため、今後も努力を続けなければならない」と締め括りました。
企業名 | 株式会社日豊ケアサービス |
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事業内容 | 介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、通所介護、福祉用具貸与、販売、訪問介護、居宅支援介護 |
設 立 | 1998年 |
所在地 | 〒879-0627 豊後高田市新地1157番地 |
TEL | 0978-22-2934 |
URL | http://olive-care.com/ |
※ 2024年12月現在