第三次大分県特別支援教育推進計画の策定にあたって
1 第三次大分県特別支援教育推進計画策定の必要性
(1)大分県の特別支援教育に係る現状
平成20年に策定した大分県特別支援教育推進計画では、校名を養護学校から特別支援学校に変更し、平成25年2月に策定した第二次大分県特別支援教育推進計画(以下「現計画」という。)では、中津支援学校の新設や知的障がい特別支援学校への高等部設置、全ての教職員の特別支援教育に関する専門性の向上、幼稚園、小中学校・義務教育学校(以下「小・中学校等」という。)、高等学校における特別支援教育体制の整備・充実等を実施してきました。
その間、県立特別支援学校在籍の幼児児童生徒数は増加しており、大分市や別府市では教室不足が深刻化し、安全で適切な教育が危惧される現状があるなど県立特別支援学校の在り方を見直すことは喫緊の課題となっています。また、幼稚園、小・中学校等、高等学校では、特に通常の学級に在籍する発達障がいの可能性のある幼児児童生徒数の増加に伴い、特別支援教育に関する教育内容の充実が求められています。
このような本県の特別支援教育の直面する課題を踏まえ、現計画が終了する平成29年度以降も計画的に施策を講じる必要があることから、平成30年度を起点とする第三次大分県特別支援教育推進計画(以下「第三次推進計画」という。)を策定することとしました。
(2)国や県の動向
平成26年1月に「障害者の権利に関する条約」が批准され、平成28年4月1日には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が施行されました。学校教育においては、障がいのある子どもの自立と社会参加を目指した取組を含め、「共生社会」の形成に向けて、重要な役割を果たすことが求められています。そのためには、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育が推進され、障がいのある子どものニーズに応じ、適切な合理的配慮の提供がなされるような体制の整備が必要です。
また、平成25年9月には、学校教育法施行令の一部改正により、「第22条の3に規定する障害の程度」に該当する子どもの就学先決定の仕組みが改められました。
これにより、柔軟な転入学が可能となり、「通常の学級」「通級による指導の教室」「特別支援学級」「特別支援学校」といった連続性のある「多様な学びの場」をさらに充実することが求められるようになりました。
特別支援教育は、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築」に向け、可能な限り共に学ぶことができるようにすることを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある子どもに対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備することが重要です。
本県では、「障がいのある人もない人も心豊かに暮らせる大分県づくり条例」を策定し、平成28年4月1日に施行しました。条例第16条で、教育における配慮として、『教育委員会及び校長、教員その他の教育関係職員は、障がいのある人が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育を受けられるようにするため、教育上必要な支援を講じなければならない』としています。
(3)第三次大分県特別支援教育推進計画検討委員会の答申
県教育委員会では、本県の特別支援教育の現状と課題を踏まえた今後の特別支援教育の在り方について総合的に検討するために、第三次大分県特別支援教育推進計画検討委員会(以下「検討委員会」という。)を平成29年4月に設置しました。検討委員会では、特別支援学校の在籍幼児児童生徒数や幼稚園、小・中学校等、高等学校での支援を必要とする子どもたちの増加などにより、本県が直面している現状と課題を多面的な視点から分析し、具体的な方策につながる議論が活発になされました。
審議結果は「大分県における今後の特別支援教育の在り方【報告書】」としてまとめられ、平成29年11月に答申を受けました。
この答申では、国の動向を踏まえ、「共に学ぶ」ことを目指しつつ、現時点で最も適切な教育を提供できるように、幼稚園、小・中学校等、高等学校、特別支援学校における教育環境及び内容の充実を図ることが必要であるとし、第三次推進計画の基本方針について「障がいのある子どもの自立や社会参加に向け、一人一人の教育的ニーズに応える物的・質的環境を整え、インクルーシブ教育システムの構築をめざす」とされました。
2 第三次推進計画の基本方針
県教育委員会では、本県の特別支援教育に係る現状や国の動きを踏まえ、検討委員会の答申をもとに、第三次推進計画の基本方針を次のとおりとします。
基本方針
障がいのある子どもの自立や社会参加に向け、一人一人の教育的ニーズに応える物的・質的環境を整え、インクルーシブ教育システムの構築をめざす
本県特別支援教育の現状と課題の解決に向け、「一人一人の教育的ニーズに応える物的・質 的環境を整える」という基本方針に沿った方策の柱は、次のとおりとします。
方策の柱
1 障がいのある子どもの学ぶ権利を保障する教育環境の整備
特別支援学校の再編整備や特別支援学級・通級による指導の教室の在り方、支援のネットワークの構築など、障がいのある子どもたちの教育に係る環境の整備について
2 特別支援教育の充実に向けた教職員の専門性の向上
研修の在り方や人材活用など教職員の専門性を向上させ、教育内容が充実するための方策について
3 第三次推進計画の期間
第三次推進計画の期間は、特別支援教育を取り巻く状況の変化が大きな時期であることを踏まえ、平成30年度から平成34年度までの5箇年とします。
なお、3年目を迎える平成32年度に中間評価を実施し、必要に応じて計画の見直し・修正を行います。